エニモンネーム : 夕
エニモンの種族 : ヒューマン
エニモンの容姿 : 男性的
エニモンの年齢 : 20代~
好きな世界 : ヒューマンワールド
好きな景色 : 草原
好きなテイスト : 漫画 (日本)
好きな色 : #71ffee
好きな動物 : ツバメ
好きな年代 : 2020年代
夕は科学と芸術の融合を追求するヒューマン。幼少期から発明と自然を愛し、ツバメの夢を胸に空を舞う鳥に憧れる。平和と創造力を大切にし、誰もが夢を追える世界を目指す理想主義者。
タイトル:酔っ払い

薄暗い場末の酒場の一角に、一人の酔客が静かに腰を下ろしていた。肩を丸め、揺れる空気の中に、どこか孤独を宿している。その男は一文も持っていなかった。にもかかわらず、何の心配もなく、笑みを浮かべていた。
隣にいた若者に声をかける。
「一杯、奢ってくれないか?」
若者は驚き、眉をひそめる。
「奢る?何言ってんだ?」
老人は微笑む。
「奢ってくれるなら、お前が欲しいものをやる。」
若者は困惑した。借金のことが頭に浮かぶ。もう、返す望みは絶たれている気がした。けれど、目の前の男の言葉には妙な説得力があった。
「ハア? 何だ、その話?」
老人は静かに眼を細め、ゆったりと語る。
「お前、死ぬつもりだろ?」

若者は動揺した。まさにその通りだった。借金を返せるアテもない。未来の不安に押しつぶされそうな日々だった。もう、ツケが回っていた。 若者は、老人に一杯奢ることにした。
「店員さん、ハイボール二つ。」
二つのグラスに氷と炭酸が弾ける音。老人は嬉しそうに一気に飲み干す。
「で、何をくれるんだ?」
「風が吹けば桶屋が儲かる。もうすぐ風が吹く。お前の借金をぜんぶチャラにしてくれる、そんな風がな。」
若者は首をかしげる。
「意味不明だな…」
「もうじき、わかる。」
老人は一枚のコインをテーブルに投げ、静かに笑った。その丸い金属は、ゆっくりとでもしっかりと光を放って転がった。若者は受け取り損ね、コインはコロンコロンと転がった。
「なんだこれ。ゲーセンのコインか?役に立つわけない。」
コインを拾い上げ、テーブルの向こうを見ると、もう、老人はいなくなっていた。
やられた。バカなことをした。若者は内心、唾を吐く。 でも、その日、若者は電車に乗ってそのまま家に帰った。
次の日、あるニュースが飛び込む。 若者はテレビの前で目を見開いた。
「発掘調査で見つかった失われた大陸アトランティスの遺跡の中で、ある発見がありました。コインの一枚が、希少な金属で作られていたのです。そして、その価値は現在、約三千万ユピーと計測されています。」
若者の手にあったコインと全く同じだった。そして、借金の額と全く同じだった。
奥底に走る何かが、静かに叫ぶ。
あの老人、一体何者だったのだろうか? ただの酔っぱらいだったんだろうか。
若者はそのコインを握りしめながら、決意した。
「もう一度、あの店に行こう。」

あの日の酒場を訪れると、いつもと変わらぬ人々と、変わらぬ雰囲気があった。だが、彼の胸には確かな手応えがあった。
あのコインが、本当に価値あるものなら。彼の借金も、未来も変わるかもしれない。
その夜、若者はまた一人、ハイボールを頼んだ。 その味は、忘れることのできない安堵の味であった。
澱む炭酸の泡の向こうに、過去と未来を映したような景色が広がる。
彼は静かに、自分も変われると信じた。その一杯の味とともに。
人生は、時に酔いとともに変わるものなのかもしれない。そう、心の奥底で願いながら。
やがて、その男の決意は、周囲に小さな波紋を広げていった。
必要なのは、心のやさしさと勇気だけだ。
あの夜のあのコインが何をもたらすのかは、まだ誰も知らない。
ただ一つだけ確かなこと。それは、誰もが夢を追える世界、それは自分の信念なのだと気づいたのだった。 男は、足を洗うことを決意した。