70代を迎えた男、ゼイはかつて科学の奇才と謳われた。鋭い眼差しと男らしい風貌、銀髪の髭をたくわえ、背筋を伸ばした姿はどこか貫禄を漂わせていた。幼少期から未知の未来に魅せられ、自己革新と創造を追求し、科学の発展と芸術に情熱を注いできた。金獅子が持つ誇りと勇気を象徴に、自らの信念を貫いてきた。

だが、時代は変わった。AIやロボットの恩恵を受けながら、ゼイはいつしか権力と富に魅入られるようになった。彼の思想は、金獅子の如く誇り高く自己の才能を誇示し、挑戦を恐れなかった。しかし、その結果、彼の支配する国家の税制は突き進み、膨れ上がった。

「この税金、やりすぎだろう？」ゼイは嘆いた。だが、その声は誰にも届かない。財政の穴は深刻で、芸術や教育にまで縮小の波が押し寄せていた。若者たちは未来への希望を失い、恋をし、結婚し、子を産むことを諦めた。結婚は贅沢、子供は負担、としらじらしい言葉が街角に溢れ、少子化は加速度的に進行した。

「このままじゃ、少子高齢化は止められない。やばい…」ゼイは独りごちた。彼はかつての科学者としての純粋な夢を忘れ、今や力と金を握る支配者となっていた。彼は国家の膨大な税金を手中に、かつての志を失った自分に気づきながらも、やめられない。自己陶酔と傲慢が彼の心を支配していた。

ある日、ゼイは自分の支配が崩れつつあることを感じた。彼の権力基盤を脅かす者たちが動きだしたのだ。貧富の差は拡大し、一部の富裕層だけが狭き世界を楽しむ一方、庶民は生活に追われて無気力だった。彼の利権を狙う反対勢力も現れた。

「これでは、日本は滅びる…」ゼイは自分の過ちに気づいた。かつての真の使命を忘れ、自己の富と権力に溺れるあまり、未来の世代を犠牲にしたのだ。だが、今更どうしようもない。彼の心には忸怩たる思いと、最後の望みが交錯していた。

彼は決断する。もう一度、科学と芸術を守り、教育を復活させるために、権力を手放す決意をしたのだ。しかし、それは遅すぎた。反逆者たちは彼を追い詰め、とうとう孤立してしまった。

彼の最期は悲劇的だった。孤独と絶望の中、ゼイは自己の過ちを悔やみながら、最後の瞬間を迎えた。彼の就いた高みは灰と化し、彼が追い求めた金獅子の誇りも儚く消えた。

日本という国も、彼の誤った選択の犠牲となった。増税を続けるあまり、若者たちは未来を見失い、少子高齢化は止まらず、国家の崩壊へと向かっていた。残されたのは、過去の栄光と、失われた夢だけだ。

「どうしよう…日本、滅んじゃった。てへ！」ゼイの最後の叫びは、時の流れの中に消えていった。彼の遺志も、彼の誤りも、未来には誰も語られることはなかった。

この物語は、才能や力を誇示することの危うさと、傲慢がもたらす悲劇を告げるものだ。科学と芸術の未来を守るために、私たちは何を学び、どう未来を築くべきか。ゼイの物語は、その問いを投げかけ続ける。