クリスマスの街は静かな雪に包まれていた。煌めくイルミネーションと暖かな笑い声が、どこか夢のような雰囲気を漂わせている。そんな中、フガクはいつものように冷静に街角のレストランへ歩いていた。彼の瞳は穏やかながらも鋭く、どこか優しい印象を与える。幼少の頃、故郷のアヤカシワールドで魔法と自然に触れながら育ち、技術と魔法の調和を信じてきた。

しかし、今夜の彼の心はいつにも増して沈んでいた。リサ、彼の恋人のことだ。事故や陰謀ではなく、彼女の身が狙われていると知ったのは、数日前のことだった。リサは人間と機械の融合種族であり、アヤカシの血を引く少女だった。彼女は、妖術と魔法の力、電子の力によって都市の未来をつくる使命を帯びていた。だが、その力は同時に、闇の勢力によって命を狙われる危険も伴っていた。

フガクは自分の人生には特別なことなど起こらないと思っていた。でも、この夜だけは特別だった。フガクはまっすぐレストランへと向かう。今日はリサへプロポーズする日だった。リサの姿を見つけ、心の中で距離を縮めるべく駆け寄った瞬間。

突如、銃声が夜空を裂いた。火花とともにリサに向けて凶弾が放たれたのだ。彼女は倒れ、叫びが漏れる。だが、その瞬間、時間が静止したかのように周囲の音が消え、世界は一瞬の静寂に満たされた。

そして、何かが変わった。時計の針が何度も巻き戻り始めたのだ。何度も何度も、同じ瞬間を繰り返す。この奇跡ともいえる現象にフガクは戸惑いながらも、はっきりと理解していた。彼はこのループを終わらせ、リサを救うと決めた。

だが、現実は非情だった。何度、手を尽くそうとリサを魔の手から救うことができなかった。その間、なん度もループが繰り返す。10回、50回、100回と。 そして、彼の心にはある確信が芽生える。何度も繰り返すこの時間のループは、まるで「等価交換」の法則の証のようだった。命を犠牲にすれば、誰かの命を救える。それは、彼の魂を揺さぶる永遠の真理だった。

彼は決意を固めた。101回目のループの瞬間、彼はその運命的な瞬間に、「すべてを捧げる」と心に誓った。彼はリサを庇い、凶弾の盾となって身を挺した。そして、その一瞬、全てが弾けた。

封印された魔法の力が解き放たれ、アヤカシの守護霊が覚醒したのだ。彼の背後から魔法の光と電子の光が交錯し、凶弾を弾き返した。時間は止まらず、刻み続けるが、世界の流れは確実に変わった。フガクは己の命を投げ出すことで、リサの命を守ったのだ。

その瞬間、彼の意識は高まり、魂の奥底から何かが解き放たれた。アヤカシと電子の世界の守護者――彼自身が覚醒したのだ。

リサは、泣きながら彼のもとへ駆け寄った。彼女の目には感謝と愛、そして哀しみと強さが入り混じっていた。フガクは微笑み、彼女の手を優しく握りしめた。

「リサ…これが、僕のプロポーズだ。君を守るためなら、何度だって諦めない。」

その言葉に彼女は震えながら頷いた。彼の勇気と覚悟は、すべての闇を打ち破る光となった。

やがて日常は戻り、冬の静けさとともに、二人は新たな一歩を踏み出した。フガクは、己が覚醒をもたらした力をもって、これからもリサのために、魔法と電子の守護者として生きていく決意をしたのだ。

彼の心には、あの日の雪景色と共に、これからも末永く続く愛の物語が奏でられている。――101回目のプロポーズは、彼らの未来を照らす奇跡となった。