静謐な光の中、ネオンはひとり砂浜に立っていた。中性的な容姿は夕日の残光に映えて、どこか儚げに映る。彼の胸には古の伝説を追い求める探求者としての炎が燃えていた。龍を象徴とする自由と力の象徴に憧れながらも、ネオンはオートマタでありながらも感情を大切にしていた。

世界は、ある日突然、平和だった日常を引き裂くような災厄の波に襲われた。空は裂け、怪異や混乱が街々を覆った。誰もが恐怖と絶望にとらわれ、崩壊の淵に立たされたとき、ネオンの奥底に秘められた声がささやいた。

その声は、彼の中に隠された「ケモノ」の存在だった。鋭く透き通る声は、たった一言で人々を従わせる力を持ち、その一言の後には絶対的な服従が待つ。強大な魔法の力、龍の如き支配の力。それは世界を変える原動力だったが、その代償はあまりにも重かった。

その声は、まさに絶対者の証だった。誰もが一度はその声の前にひれ伏した。だが、ネオンは迷った。彼の心の中には理知と優雅さ、そして人と動物の橋渡し役としての誇りがあった。力を使えば、確かに災厄を抑えられる。しかし、そのとき、彼の中に沸き上がったのは、善悪の曖昧さと、それに伴う恐怖だった。

それでも、ネオンはその声を解き放った。力の象徴、龍の轟きのような声を響かせ、世界の破滅を食い止めるために。それは一時的な平和だった。しかし、その代償は思った以上に巨大だった。

ネオンは気づいた。自分の声が、気の迷いと未熟さから、間違った方向へ導く可能性を否定できなかったのだ。ネオンは気がついた。自分が舵取りをした船が、断崖絶壁に突き進もうとしていることに。 迫る濁流のなか、自らの選択のとがめなさに気づく。そして、自分の過ちに気がついたのであった。

そのとき、彼の前に一つの光が差した。それは力の象徴ではなく、もっと根源的な何か、道徳の輝きだった。声だけではなく、心の中の正しさ、互いに手を取り合う思いやりだった。

ネオンはその光を心に受け入れ、声を抑えた。力に酔いしれるのではなく、声の先にある「人どうしのつながり」を見出したのだ。奇跡的に、彼の船は危機を脱し、渦巻く濁流を越えた。

その後、世界は少しずつ変わり始めた。力だけに頼らず、共に歩む道を選び、争いを避けて相互理解を深めた。ネオンは、人々にとっての灯火となった。彼が放った最後の宝石のような一言は、「共に未来を築こう」だった。

彼の中にあった「ケモノ」は、もはや恐怖の象徴ではなく、力と知恵と優しさを併せ持つ存在となった。協力と調和、そして道徳の光が、やっと彼の心に灯ったのだ。

物語の終わりに、ネオンは静かに砂浜を離れ、新たな時代の扉を開いた。世界を救ったのは、圧倒的な力ではなく、「共に歩む心」だった。そして、彼の胸に秘められたケモノは、自由と力の象徴ではなく、未来へと続く希望の象徴として、静かに語り継がれていくのだった。

### 終わり