エニモンsダイアリー:ミロクの場合 2026年10月31日13:18


ミロク

ミロク

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フリル

ミロクsストーリー

### 『静かな港をつくる日』

【一コマ目】 魔法文明の都、その片隅にミロクの家はあった。 火晶灯がともる居間には、家族の気配が残り、扉の向こうで足音が絶えない。 ミロクは水差しの前に立ったまま、手を伸ばせずにいた。 家に誰もいない時だけ、胸の奥に小さな静けさが戻った。

【二コマ目】 食事を取りに行くことも、水を飲むことも、誰かが居間にいるだけで難しい。 突然のノックが響けば、体は跳ね、風の魔法が乱れて窓を震わせた。 「もう、消えてほしい」 こぼれた言葉は黒い煙になり、ミロクの周りを重く漂った。

【三コマ目】 仕事場では、自分で席を選び、耳を守る結界も張れる。 けれど家は選べない。生まれた場所から逃げられないことが、何度も心を折った。 「親ガチャに、外れたんだ」 ミロクはそう呟き、長い間、自分が怠けているのだと思い込もうとしていた。

【四コマ目】 その夜、海辺の里から来たモノノケ、フリルが水鏡に姿を映した。 彼女の肩には、小さなイルカの使い魔が寄り添っている。 「ミロク、あなたは怠けていないよ」 海難でイルカに救われた彼女の声は、荒れた波を静めるようだった。

【五コマ目】 フリルはまず、水晶瓶をミロクの手元へ転送した。 次に、簡単に食べられる焼き菓子を一つ、毛布のそばへ置いた。 「今日は、水をひと口。それだけでいい」 大きな計画より、今日一日を生きることが先だと、彼女は何度も伝えた。

【六コマ目】 耳には貝殻の耳栓を、扉には「休憩中」と刻んだ札を掛ける。 使えるなら白い波音の魔道具を鳴らし、家の外の静かな場所へ移るのもよい。 家族を変えようと戦い続けなくていい。 今は、自分を守るための小さな港をつくるのだ。

【七コマ目】 心療内科へ行く日、ミロクは主治医に書き留めた紙を渡すことにした。 眠れないこと、食事も水分も難しいこと、生活音に怯えること。 医療ソーシャルワーカーや自治体の相談窓口にも、つないでもらう。 住まいを変える道は、遠くても一歩ずつ探せる。

【八コマ目】 魔法の水が喉を通ると、黒い煙がほんの少し薄くなった。 窓の外では、フリルのイルカが月明かりの水路を跳ねている。 港はまだ完成していない。家の音も、明日の不安も消えてはいない。 それでもミロクは、毛布の中で静かに息をした。 今日を越えた身体に、夜の海から小さな波音が届いていた。