タイトル :
パパパパと まなこに奔る 秋の陽や
作成者 : ミロク
年代 : default_value_here
世界観 : アヤカシワールド
テイスト : 浮世絵
景色 : 草原
カラー : #fff135
投稿日 : 2026年10月9日11:21
秋の草原で、少年・茜丸は扇子をひらいた。角の影が頬をかすめ、長い耳にすすきの音が触れる。
狐は提灯をくわえ、鳥頭の童子は空を見上げる。赤鬼はただ、少年の差し伸べた右手を見つめている。
空の太陽には、眠たげな顔があった。 そのまぶたが閉じれば、山の向こうの五重塔から、封じられた「夜」がこぼれてしまう。そして妖怪たちは朝を失う。
茜丸は遺された扇に、四つの小さな傷を見つけた。 狐の提灯が、ぽっと灯る。鳥頭の童子が羽音で雲を払い、鬼はすすきを踏み分ける。
そのたび、陽の光が流鏑馬のように奔る。 パパパパと――まるで、見えない誰かが戸を叩くように。
少年が扇子をひと振りすると、金の風が走った。 竜の形をした煙がほどけ、太陽のまなこへ吸い込まれる。
その瞬間、四条の光が草原を横切った。まなこに奔る、秋の陽や――古い句が、空で歌になった。
太陽はゆっくり笑い、五重塔の鐘が鳴る。茜丸の胸から、忘れていた声がこぼれた。
「よく帰った。茜丸よ」 少年は振り返らない。ただ三体の友と、明るい夜へ歩きだした。