タイトル :
ススキ穂を 案内すかな スズメバチ
作成者 : ミロク
年代 : 1980年代
世界観 : ファンタジーワールド
テイスト : 漫画 (日本)
景色 : カフェ
カラー : #008000
投稿日 : 2026年10月30日15:14
### 『ススキ穂を 案内すかな スズメバチ』
窓辺のカフェ《六つ星》では、夕暮れが緑の蜜のように揺れていた。猫耳の魔法使いミミは、冷めかけたエルフブレンドを見つめる。壁のメニューには、火、雷、風、水、光、大地。
けれど今夜、どの魔法も「帰り道」だけを忘れていた。そのとき、羽音がひとつ。スズメバチが、細いススキ穂を抱えて窓から飛びこんできた。
「ススキ穂を……案内すかな」
低い声は、秋風が古い鍵を鳴らすようだった。ミミは緑のケーキを一口かじり、立ち上がる。甘さの奥で、土の匂いと遠い雷が目を覚ました。
ドラゴン帽の客たちも、カップを置き、息をひそめる。ススキ穂の先から、銀色の道がこぼれ落ちた。道は窓の外へ伸び、妖精草の森を縫っている。
スズメバチは風をまとい、穂を小さな旗のように掲げた。火は足もとを照らし、水は夜露を払い、光は星を呼ぶ。大地の鼓動が、忘れられた帰路を指し示した。
森の奥で、眠っていた月がゆっくり瞼を開く。
ミミは振り返る――カフェの灯りは、まだ温かい。「案内すかな」とスズメバチが笑い、ススキ穂が揺れた。
その穂先には、明日の扉が一本、静かに立っていた。