種族:ヒューマン
遺伝子という呪い

【一】 サインの国では、血筋が未来を決めていた。 賢い母と、強い父。その子は、きっと強く賢くなる。 青い髪と青い瞳を持つサインも、祝福されたサラブレッドだった。 生まれた瞬間から、彼の道には黄金の標が置かれていた。
【二】 国は強かった。 一騎で千人を退ける無頼者たちが、白い城壁の外を駆けた。 けれど、誰も知らなかった。 世界は、計算された道ではなく、無限に枝分かれする混沌だということを。
【三】 サインは若くして将軍となった。 敵の動きを読み、兵の心をひとつにする、優れた指揮官だった。 だが戦場で、敵は予測の外から現れた。 閃光と爆音のあと、サインの利き腕は、空の彼方へ消えた。

【四】 「腕を失った将軍に、国は守れない」 王はそう言い、サインの肩書きを奪った。 そして国は敗れた。故郷が焼けた。彼は瓦礫の中でひとりになった。 優秀であることは、ほんの一瞬で剥がれる衣だった。
【五】 苦役場で、サインは泥にまみれた人々と出会った。 かつての英雄。才能を見つけられなかった子。 病を抱えながら、誰よりも機械に詳しい娘。 彼らの瞳には、まだ消えない火があった。
【六】 サインは失った腕の代わりに、雷を蓄える機械翼を作った。 青い宝石が鳴り、銀の歯車が夜空を噛んだ。 「優秀かどうかなんて、どうだっていい。」 サインは笑った。「大切なのは今日、何をするかだ」

【七】 うるう月の最後の満月、大嵐が来た。 敵はそれを知らず、城門の灯を落として眠っていた。そして、故郷を奪った者たちは、サインたちを路傍の石だと決めつけていた。 雷工房の翼が、嵐の空にひらく。 サインたちは風とともに駆け、地の利と天の利を刃に変えた。
【八】 夜明け、故郷の旗が再び城壁に立った。 サインたちは国の仕組みを変えた。生まれではなく、歩いた道を信じる国へ。 折れない槍ではなく、しなって戻る槍を。 傷ついた者を置き去りにしない、回復の盾を。
【九】 サインは新しい翼を見上げた。 それは、失った腕を忘れるためではなかった。 失ったものを抱えたまま、まだ飛べると知るためだった。 遠い空で、ワシが一羽、自由の証のように旋回していた。
サインはサラブレッドだった。
サインのいる国では、優生学が当たり前であった。優れた血を掛け合わせることで、優秀な遺伝子を持つものをつくりだす。
そして、優秀なものだけが生きられる。それが、サインの国のしきたりであった。
それ故に、サイ・・・・・・・・・・・➡