種族:アンドロイド
ライバルでよかった
ゆーりは、焼け跡から拾った黄色いインコを右肩に乗せ、 崩れた街の歌を、小さな記録機へしまっていた。 オレンジの髪には機械の飾り。首の後ろでは、妖術回路が淡く光る。 彼女は、失われた歌が戻れば、種族の違う者たちも暮らせると信じていた。

その日も、ゆーりは昼寝をしていた。 隣には、トウマが寝ている。 ゆーりの右手と、隣で眠るトウマの左手は、再生の手錠でつながれている。 破壊の左手を持つゆーりと、創造の右手を持つトウマ。
二人が争えば、山が崩れ、海に穴が開いてしまう。 だから、トウマは再生の手錠を創った。 世界の均衡を守るために。 「手錠を外して」 「いやだ。昨日、雲を半分壊しただろ」 「トウマが花に変えたから、いいでしょ」

言い争いの途中、空がひらいた。 積乱雲に似た宇宙船が、幾千、幾万。星を覆い尽くす。 先頭の船から、赤い旗を掲げた巨人が現れた。 彼らは、自分たちをブレイブマンと名乗った。
「この星は、今日から我々のものだ!」 ゆーりは嬉しそうに立ち上がった。 トウマは、ひどく面倒そうにため息をついた。

黄色いインコが、彼女の肩で一声鳴く。 それは、戦火の中では聞くことのない明るい歌だった。 「トウマ?どうする?」 「そうだな。一時休戦といこう。この手錠、外すぞ。」 そして。二人は、空を飛んだ。
幾千幾万の船から、破壊光線が降りそそぐ。 ゆーりは左手を空へ向けた。 一振りで、一恒河沙の光線が生まれ、夜空を橙色に染める。 光と光がぶつかり、星々が震えた。

だが、何本かの光が街へ漏れた。 トウマは右手をひらき、光線を花びらへ変えた。 さらにトウマは透明な壁を街中に広げた。 それは再生の壁だった。 その壁へ触れたものは、すべて音符になる。 抜け漏れた光線や砲弾は、再生の壁へあたり、 ベートーヴェンの旋律を奏でた。
「破壊しすぎだ、ゆーり!」 「じゃあ、もっときれいに創って!」
二人の手錠が、まばゆく光る。 破壊と創造が、一本の輪の中で混ざり合う。 ゆーりの雷が空に光の巣を描き、トウマの力がそこへ橋を架けた。 ブレイブマンの船団は、巣に絡め取られ、次々と沈黙した。

最後の旗艦が、逃げようとした。 トウマはその前に、黒い穴を創造する。 ブラックホールは掃除機のように船を吸い込み、ゆーりはそれを遠い宇宙へ放り投げた。 誰も傷つかない場所へ。誰の歌も消えない場所へ。
静けさが戻る。 インコが、拾ったばかりの歌を口ずさんだ。 ゆーりは笑い、トウマは疲れた顔で空を見上げた。
「疲れたな。休まないか。」 「うん。楽しかった!」
二人はまた、草の上で眠りにつく。 つながれた手錠は、世界の輪郭のように静かだった。 ゆーりの夢の中で、光の巣に集まる小さな住人たちと歌を歌った。 その隣には、いつも不機嫌なたった一人のライバルがいた。
ゆーりはバカ強い。
すんごい、強い。あほほど強い。
こぶしを握り、一振りすれば山がくだけ、海に穴が開く。
それくらい強い。
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